simpleA記

馬にふつまに 負ほせ持て

書籍電子化におけるエスクロー方式とは?(後半)

ちょっと、いろいろあって、間が空いたけど、前回の続き。


前回、

Peterは何を問題にしているかと言うと、


CICには多くの公立図書館が含まれており、その図書館の費用負担は、税金から出ている。データがエスクローに入ったまま、Googleしか利用できない状態が続くようなプロジェクトに、税金を投入してよいものか


ってこと。


ところが、このPeter発言に対して、2日後の6月15日に、ひとつの反論があった。ややこしいことに、反論した人もPeterだった。だから、「Peter2」って呼ぶね。(右写真はhttp://www.library.cornell.edu/staffweb/kaleidoscope/volume14/February2006.htmlより)


この「Peter2」はちょいとした有名人で、「セクション108スタディグループ」ていう格好いい名前の委員をしてたりする、著作権のことをよーく知ってる人。http://blog.librarylaw.com/っていう、たまーに更新されるんだけど、なかなかためになるブログに書いてたりする人だよ。要チェック。


そんな「Peter2」の言い分は、

I am one of those who was surprised by your assumption that it was Google, and not the CIC, that came up with the escrow option.

ってなわけで、「おいおーい、びっくりしたぞー。なんで、Googleがこのエスクロー作戦を思いついて、悪さしよーとしてる、って考えてんだ。おそらく、私以外の人も、CICの発表を聞いて、これはCICの弁護士がCICを守るために入れさせたんだな。賢いなって思ったはずだよー」ってこと。


つまり、CICの弁護士は、「書籍の電子化がフェア・ユースの範囲内だって言ったって、やっぱり、著作権はややこしいぞぃ。いつなんどき、争いに巻き込まれるか分かりゃしない。そんなリスクをCICのメンバーが負うべきじゃーねぇ。ここはいっそのこと、著作権に問題ありそな本のスキャンデータは全て、Googleに預かってもらえばいいんだよ。そんで時が来たら、絶対に返してもらえるようにするために、「エスクロー」って仕組みが使えるじゃんね。」ってなことを考えたんだろー。


ということは、CICはGoogleの費用負担*1でスキャン作業して、しかも、著作権がらみの面倒くさい部分は、ぜーんぶGoogleに戦ってもらうっていう、「おいしい」プロジェクトに参加したってこと。


これなら、税金使っても許されちゃう?


さらに、「Peter2」は続ける。

The important thing is that the public is going to get improved full-text access to probably 8 million volumes (if we assume 80% of all works are protected by copyright). This seems like a great thing, and the CIC should be applauded.

ってなわけで、(ちょいとPeter2は数字間違いしてると思うけど)、「今回1000万冊をスキャンする予定でしょ。そんでおおよそ80%が著作権がらみでエスクロー入りしちゃうとしても、それでもだね、200万冊分のデキストデータにアクセスできるようになるってのは、それだけでも偉大な事業だよ。CICをほめてあげようよ!」って言ってる。


というわけで、結局何が言いたいのかって言うと、「もし、このエスクロー方式ってのが通用するんだとするとね、結構使える技だと思うんだよね。だってね、1日3,000冊のペースでスキャンしていっても、1000万冊を終了するのには、9年はかかるんだよ。そしたら、著作権のことが全てクリアになりました、じゃ、スキャン開始しましょーってんじゃ、遅いよね*2。でも、著作権のことがクリアになりました、じゃ、Googleさん、預けてたデータ全部返して!ってなことになれば、。。。 そんな可能性を、このエスクロー方式ってのは秘めてると思うよ」ってこと。

*1:前にも書いたけど、CICも相当の負担を強いられるからね

*2:念のため、断っておくけど、著作権を無視しましょう、という意味じゃーない。著作権は遵守すべきだよ。ただ、見直すべきだと思うよってこと。それか見直しが終了するまでの間、何らかの形で、スキャン作業だけでも始めてたほーが良いかなー。