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simpleA記

馬にふつまに 負ほせ持て

語彙力以前の問題(その1)


私は英語を教えることがある。私の限られた経験上、多くの人が、「英単語が分からないから、英語が話せない」、すなわち、「英語の壁≒語彙(ごい)力の問題」だと思ってる(ふしがある)。


そんなとき、私の口が酸っぱめに言う。「それは語彙(ボキャブラリ)力以前の問題なんよ」と。


例えば、自己紹介。


自己紹介をしなきゃならん場面なんて、日常茶飯事。当然、英語でだって、なによりもまず、自己紹介くらいできんと話にならん。ところが、

えーっとー、My name is Naru. えーっとー

という具合で、なかなか先に進まない。そんなとき、たいてい「単語が分からない」と言う。


「じゃぁ、日本語でえーから、自己紹介してみー」と言うと、数人はちゃんと自己紹介し、多くはたどたどしい自己紹介し、なかには、全くもって自己紹介できん人がいる。


それは「(英語の)語彙(ボキャブラリ)力以前の問題」なんじゃーないかと思うわけ。日本語でさえ自己紹介できん状態で、なんで、英語で自己紹介できましょーか?こういう場合、数週間をかけて、日本語での自己紹介から教えるんです*1。急がば回れ、なんですぅ。


さて、私の本職は、英語の先生じゃーないので、ビジネスの話に戻しましょ。


当然、ビジネスにおいても、「語彙力以前の問題」はあるわけ。みんな専門用語みたいなペラッペラな言葉を振り回して、どーにかなってると思うわけ。それか、専門用語が分からんから、会話についていけない、と思うわけ。でも、ペラッペラな専門用語を全部とっぱらってみて、普通の言葉だけで、話をしてみると、どんだけ、意外に、困難なことなのか、分かる(かもしんないし、分からんかもしんない)。


専門用語*2で済ませたほうが、会話は意外とシンプルかもしれない。でも、「見た目にシンプルにしてるもんは、その裏に、膨大な非シンプルが隠れてんよ*3」ってことで、意図的に/意識的にシンプルにしてんなら問題なしだけど、便宜的に/惰性的に専門用語で済ませてる場合は要注意。つまり、惰性的に専門用語で済ませる連中は、実はその裏の膨大な非シンプル(≒専門用語の意味・起源・用法など)に気付いてなーいし、考えようともしなーい。そんな連中は、いざ、普通の言葉で話してみー、と言うと、

それは、つまりですね・・・えーっとー

という具合で、なかなか先に進まない。そんな連中と、どんなに真剣に、専門用語を使いながら、ビジネスのお話をしても、埒が明かない。なぜなら、そんなソフィスティケートされたカンバセーションでは、ミューチュアルなアンダースタンディングにリーチできないし、そもそも、各ジャーゴンのデフィニションが人それぞれで、ディスカッションのベース自体がフラジャイルなんだから。


ってなわけで、結局何が言いたいのかって言うと、「英単語が分からないから、英語が話せない、ってのは、そーいうもんなんだろう。でも、最後の最後で、あなたの(英)会話の限界を決めるのは、あなたの日本語。例えば、"the theory of social contract"ってのが、「社会契約説」なんだってのは、辞書みりゃ分かる。でも、「社会契約説」って日本語が分からんなら、そんな会話は日本語でも英語でもできん。と考えると、英語の勉強以前に*4、何をすべきか、少しは分かるはず。類推で、くだらんビジネス書で専門用語を蓄える以前に、何をすべきか、少しは分かるはず。それはいたって、語彙力以前の問題であって、基礎的な意思疎通の問題なんよ」ってこと。(続く)

*1:どーやって教えるのか、とか、まともな自己紹介ってのはどんなもんか、ってなことは、話すと長〜くなるので、省略す

*2:カタカナ語含む

*3:http://d.hatena.ne.jp/simpleA/20080625

*4:すくなくとも、英語の勉強と平行して