simpleA記

馬にふつまに 負ほせ持て

経済学とビジネス その4

前回、「ビジネスの大海において、無様な我流泳法でもどうやら生き延びてるのは、徹底した体験指向のおかげ(かも)」なんて話をした。


ところが、経験を重視するだけじゃ、どーにもならん時がある。どんなときか?


長ーいけど、引用しましょ。Heisenbergさん曰く。

コロンブスのアメリカ発見について、そもそも彼の偉大な点はどこにあるか・・・


それは西回りのルートでインドへ旅行するのに、地球が球形であることを利用しようというアイディアではなかった・・・このアイディアはすでにほかの人々によって考えられたものであった・・・


彼の探検の慎重な準備、船の専門的な装備などということでもなかった。それらのことは、ほかの人でもやろうとすればやれたに違いない。


そうではなくて、この発見的航海で最も困難であったことは、既知の陸地を完全に離れ、残余の蓄えでは引き返すことがもはや不可能であった地点から、さらに西へ西へと船を走らせるという決心であったに違いない。


Heisenbergさんの『部分と全体』(ISBN:4622049716)より勝手に改行付き


さて、偉大かどーかは別として、simple Aのヘンテコりんな点はどこにあるか・・・

それは、モデルを売るというアイデアではなかった・・・そんなアイデアはすでに他の人々によって考えられたものであった・・・


モデルに注ぎ込む経験の豊富さ、モデルを組む巧みな技法などということでもなかった。それらのことは、ほかの人でもやろうとすればやれたに違いない。


そうではなくて、このヘンテコりんな転身で最も困難であったことは、(経済学という)既知の陸地を完全に離れ、残余の蓄えでは引き返すことがもはや不可能であった地点から、さらにビジネスの奥へと切り込むぞという決心であったのかーもしれない。


そうなんよ、一番の障害は、いつでもどこでも「決心の揺れ」なの。調子良いときは問題ないんだけど、ちょっとでも困難を前にしたり、登ってきた高みに足がすくんだりすると、つい、「後戻り」が頭をよぎるわけさ。


よくね、「退路を断つことが重要」って言う人がいるんだけど、こりゃ、間違いだと思うよ。退路なんて、いつでも見つかるの。だって、来た道戻ればいいんだもん。


なので、実践的には、わき目も振らず、早く「残余の蓄えでは引き返すことがもはや不可能である地点」に到着しちゃえばいい。綱渡りでね、ちょうど真ん中のとこにいると想像してみぃ。どんなにビビッたって、立ち止まってても埒が明かないし、引き返すのも、そのまま行くのも、同じ距離で、同じ危険。そんなら、前に行くしかないじゃん、みたいな感じ。


ということで、結局何が言いたいのかって言うと、「2007年4月12日、私は、残余の蓄えでは引き返すことがもはや不可能であった地点に達し、それでも西へと進んだんだよ*1。そして、あさって金曜日、さらに西へ行って(http://d.hatena.ne.jp/simpleA/20090228)、「デザイン≒モデル化」の話をするわけさ。でも今回は、ちゃんと帰りのチケットも持ってくよ」ってこと。

*1:http://d.hatena.ne.jp/bookscanner/20070412