simpleA記

馬にふつまに 負ほせ持て

Even if I did not know where it was headed.


さて、今、英語と夏目漱石が流行らしい。流行に乗って、風邪も引いたことだし、ついでに。


まずは英語から。

It was only then that I realized I should have stayed on board that ship; yes, even if I did not know where it was headed. But now it was too late for me to act on that realization, and it was in the grip of endless regret and infinite fear that I slipped silently toward the black, black waves.


http://lookingcloser.wordpress.com/2008/03/17/whats-your-favorite-last-line-of-a-novel/#comment-7579*1

ってなわけで、これは『夢十夜』からの一節。(ブンポー的には、話題豊富な文だね)


夢十夜』ってのは、こーんな夢みたよー、とか、あーんな夢みたよー、ってな感じのやつ。そんで、第1夜から、第10夜まで、10個の短いお話が用意されてる。(http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/799_14972.html


そんで、上の英文は、第七夜の最後の場面。

自分はどこへ行くんだか判らない船でも、やっぱり乗っている方がよかったと始めて悟りながら、しかもその悟りを利用する事ができずに、無限の後悔と恐怖とを抱いて黒い波の方へ静かに落ちて行った。


http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/799_14972.html


ってなわけで、結局何が言いたいのかって言うと、

いつの時代でも、どこの場所でも、自分の乗った船*2ってのは、「どこへ行くんだか分らない」。「船の男を捕まえて、『この船は西へ行くんですか』と聞いて」も、分かりゃしない。そりゃー、「大変心細くな」るわけだ。「欄に倚りかかって、しきりに泣いてい」る「女を見た時に、悲しいのは自分ばかりではない」と分かり、サロンでピアノ弾いて歌ってる「二人は二人以外の事にはまるで頓着していない様子で・・・船に乗っている事さえ忘れているよう」なんだな。


でも、


どこへ行くんだか判らない船でも、やっぱり乗っている方がよかった」んだな。「思い切って海の中へ飛び込んだ」やつが言うんだから、そーなんだろう。「自分の足が甲板を離れて、船と縁が切れたその刹那に、急に命が惜しくなった」らしいよ。「心の底からよせばよかったと思った」らしいよ。「しかし捕まえるものがないから、しだいしだいに水に近づいて来る。いくら足を縮めても近づいて来る」らしいんだけど、この期におよんで、足を縮めてる姿がかわいいね。


なので、行き先不明で不安でもいい。しきりに泣いてもいい。のんきに歌っててもいい。でも、思い切って海の中へ飛び込むってのはやめましょ、と漱石の夢は言ってるよ。


というわけで、本日のフレーズ:I realized I should have stayed on board that ship even if I didn't know where it was headed.を覚えましょ。

ってこと。



(追記)
上記で引用した夏目漱石の英文に関してなんだけど、脚注で紹介したびっくりさんが、びっくりしちゃったらしい。辞書片手に彼のエントリでも見に行きましょ。http://shinbikkuri3.wordpress.com/2008/11/20/linked-by-a-japanese-blogger/

*1:この英文が、正しいのかどうかは知りましぇーん。「平成16年皐月20日に日本に引越し」てきた「びっくりさん」(http://shinbikkuri3.wordpress.com/about/)が勝手に訳したかもしんないしぃ。

*2:会社でもいいし、国でもいいし、はては、現代ってなもんでもいいし、人生でもいい