simpleA記

馬にふつまに 負ほせ持て

デジタルデータを数千年にもわたって存続させんだぞぃ

たとえばデジタルデータの保存の問題。(フォーマットやOSのバージョン違いなどによって)デジタルデータは概ね10年ごとに消滅してしまう。にもかかわらず、すべてはデジタルになっていく。たった10年前の情報すら引き継ぐことができない文明というのも、何とも無様だ。エジプトは王の墓を次の世紀へ、次の千年紀へと引き継いできた。デジタルデータが数千年にもわたって存続するなんて、今はまだ思いもよらない。ただ、ロング・タームを真剣に考えるなら、その手立てを考える必要も出てくるということだ。


http://www.asahi.com/tech/sj/long_n/02.html

のんきな1万年じぃさんこと、スチュアート・ブランドさんは、こー言う。個人的には、「10年前の情報すら引き継ぐことができない文明」でも、ぜーんぜん、ブザマなんかじゃないよー、って思うんだけど、そこはじぃさんの言うことだ、きっとそーいうことなんだろう。なので、とりあえず一緒に手立てを考えよー。


まずは、搦め手から、始めましょ。


今回登場してもらうのは、スイスのヘンテコ博士、Lukas Rosenthalerさん。


http://www.iml.unibas.ch/index.php?content=3


この絵、どっかでみたことあるなーと思ってたら、札幌のヘンテコ教授、三ちゃんだ!(下写真の左端)


http://f.hatena.ne.jp/elmikamino/20080724094131


話を元に戻せば、このLukasさん、「デジタル・データをどうやって長ーく保存しておこっかなぁ」ってのを考えてるナノテク専門家なの。どーんな感じで考えてる人かっていうと、


英語が読めて、お金(12ドルくらい)余裕がある人は、これでも読んでみてね。
The (short) History of Digital Archiving
http://www.imaging.org/store/epub.cfm?abstrid=33630


英語は読めるけど、お金はないよ、って人は、これでも眺めて、彼のプレゼン内容を想像してみて。
The (short) History of Digital Archiving
http://www.iml.unibas.ch/SKRIPTEN/ReseauCinema/01_reseau_archiv_history_digarch.pdf


英語が読めないよ、って人のために、簡単に説明しときましょ。
(参考:http://www.scribd.com/doc/3332105/simpleR069r0


おおげさっぱに言って、「デジタルデータが数千年にもわたって存続する」には「3つの障害」があるわけ。

データが書き込まれたメディア*1そのものに不具合が発生する

  • メディアそのもの劣化
  • 物理的、化学的、ないし磁気的にビット情報が消滅


そのメディアに読み書きする技術(ソフトないしハード)が消える

  • 物理的フォーマットないしロジカルフォーマットの変化でメディアが陳腐化
  • 必要な「ドライブ」ないし「コントローラー」の製造終了


メディアに書き込まれたデータのデコード方法に関する情報が消える

  • ソフトウェアの陳腐化
  • ソフトウェアの稼動環境(OSなど)の陳腐化


あまりの障害の大きさに、1万年じぃさんこと、スチュアートさんは、「デジタルなんか駄目だー、アナログにすんぞー」と言い始める。*2


しかーし、「障害が予想できるんなら、対策があるんだぁ」と信じるLukasさんは、おおよそ4つの対策をあげ、

  • Computer museum:メディア、コンピュータ本体、周辺機器、全てのソフトウェアなど、システム全体を、稼動させることのできる状態で保存しておく
  • Emulation:エミュレーションやバーチャル化を用いて、最新のコンピュータ上に古いシステムを実現し、古いソフトウェアを動かす
  • Migration:メディアの劣化が始まったり、フォーマットが陳腐化したりしたら、データを必要に応じてフォーマット変換し、新しいメディアにコピーする
  • Permanent media:メタデータなどシンタックス情報やセマンティック情報を含む形で、かなり長期的に保存可能なメディアに書き込んでおく

それぞれの例を、あれやこれやと提示し*3、最後に、

These examples have shown that long-term archiving of digital data is a difficult but not insurmountable task.*4

ってなわけで、「これらの例を見る限り、デジタルデータが数千年にもわたって存続するってなことは、難しいかもしんないけど、絶対無理だってぇ、わけでもなかろうが」と言い張る。


ってなわけで、今日のところは、何が言いたいのかって言うと、「まぁ、いろいろ小難しいことがあんだけど、一番ネックになってくるのは、メディアそのものの寿命じゃないかな、ってのんきに考える。Lukasさんの対策でいうところの4番目(Permanent media)。なんでかって言うと、それ以外の対策ってのは、結局、きちんとドキュメントを残しておきましょーってことに還元できんだけど、そーすっと、そのドキュメントをどーやって後世に残すのか*5、って部分が大問題なわけさ。つまり、デジタルデータが数千年にもわたって存続するかどうかってのは、畢竟、メディアの寿命*6にかかってるってわけなんさ。なので、次回より、メディアの寿命について、あれこれ詮索するつもりだよ」ってこと。


でも、そのまえに、ひと休み、ひと休み。それでは、みなさーん、のんきな週末を。Have a Nonking weekend!

*1:HDDとか、CDとか、DVDとか、フロッピーとか、磁気テープとかなど

*2:厳密に言うと、違うけどね

*3:英語は読めるけど、お金はないよ、って人向けに紹介したPDFでも見るといろいろと載ってるよ。特に、彼のデジタル・データってのは何ぞや?という探求に注意しておいてねぇ

*4:Archiving 2006(http://www.imaging.org/store/physpub.cfm?seriesid=28&pubid=735)の74ページより

*5:紙?CD?磁気テープ?フィルム?石?記憶?

*6:ちょっとだけ厳密に言うと、寿命の長短はどーでもいいの。重要なのは、寿命をある程度正確に予測できるかどーかってところ。1年しかもたないことが正確に分かってんなら、毎年、メディアの書き換えをすればいいだけ。でも、正確な寿命がよー分からん場合、不必要と思われるくらい書き換えをしておかないと、心配で夜も寝られないでしょ。