もうひとつの「見晴らしのいい場所」
「見晴らしのいい場所」(ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)のp.097)って聞くと、こんなことを思い描く。
しかも、梅田さんがp.098で、「見晴らしのいい場所」というのは、
その分野の最先端で何が起きているのかを一望にできる場所のことである
と定義してるから、なおさら。
こうなると、当然、
最近思うのは、「見晴らしの良い場所」というのは、決して磐石な足場に立てる状況のことではなく、とても不安定でちょっとした加減でグラッと落ちてしまう様な危険な場所ではないかということ。つまり、目立つし(変人が目立つように)、ちょっとした批判や強固な慣習に晒されやすく、目には見えない手で引っ張られてしまうような場所。だからこそ下を見ることなく上を目指し、遠くを見続ける場所なのではないかと。
と感じる。ちょいビビる。
しかし、私の見てきた限り、もうひとつの「見晴らしのいい場所」があると思うよ。しかも、かなり「安全」な、のほほんとした場所が。
サンフランシスコから南へ車で2時間くらいかな。ギルロイって町があります。毎年、「にんにく祭り」を開催するヘンテコな町です。
そのギルロイってところに、かつて、ギルロイ温泉、通称「ヤマト温泉*1」ってのがありました。(今はありません。)この温泉は、サンフランシスコに長く住んでる人なら一度は耳にしたことある、チョイ有名なとこ。しかも、「この温泉は真夜中しか開いてなくて、電球などをつけないから、真っ暗闇の中で入る」などという怪情報まである*2。
そのヤマト温泉を経営していたのは、日本人の「おっさん」です。この「おっさん」は2006年くらいまでサンフランシスコに住んでたんですが、今は、日本のある島に住んでます。
この「おっさん」、見た目は、単なる「おっさん」です。中身は、変な「おっさん」です。
どんくらい変なのかというと、最近、音楽CDを出しました。作詞はこの変な「おっさん」がやったんですが、作曲は銀座のクラブでピアノ弾くちょいとした有名ピアニスト。歌は、ラジオなどでも人気の某女性歌手。地方のテレビでお天気番組の後ろで流れ、有線でも流れ、大阪のラジオで流れ、挙句の果てに、あるフェリーの中で四六時中流れてる始末。
この変な「おっさん」は、単なるド素人です。彼の作った詞だって、決して、大したもんじゃありませーん*3。だけど、あれよあれよ、という間に、話は大きくなっていくんです。
なんでこんなことになるのかって言うと、実は、ヤマト温泉のもたらした「お友達パワー」のおかげなんです。
想像してみてください。日本から遠く離れた異国の地に、たとえ真っ暗闇で入らないきゃならんとは言え、温泉があるんです。異国で働く戦士たちは、みんな、その羽を休めるために、このヘンテコ温泉にやってくるわけです。いろんな分野で活躍してる戦士たちが、丸腰で集まるわけです。そして今度は、その丸腰軍団が、変な「おっさん」のために、さらに一肌脱いじゃうわけです。
ってなわけで、結局何が言いたいのかって言うと、「下の写真のような場所でも、最先端で何が起きているのかを一望にできるよ。だって、ここには、別の「見晴らしのいい場所」からいろんな人たちが集まってくるから。しかも安全だし、目立たないし、誰も引っ張らんし。だからこそ下を見ることなく上を目指し、ゆっくり遠くを見続けられる場所なんじゃないかな」ってこと。
http://www.asahi-net.or.jp/~ue3t-cb/bbs/special/mike_sato_canada/canadian_hotspring12.htm
ちなみに、この写真は、ヤマト温泉ではありません。