世間からずれていくって話(第1話)
(本日より、ほーんの少しだけ、書き方のスタイルが変わりますが、お許しください。)
現在進行形で巻き込まれている場合、そのことについて話すと、何かと支障があったりする。
そんなわけで、「今は昔、アメリカ滞在中の話」ってのは、何かと語りやすい。
そのアメリカを語る第1弾:アメリカのクレジットカードについて。
日本って、年会費無料っていうクレジットカードがあるでしょ。アメリカにも当然あるわけ。
ところが、アメリカにはもっとすごーいのがあって、1年間くらい支払いをしなくっても良いっていうクレジットカードまであんの。たいてい、この特典は、新規にクレジットカードを申し込むと付いてくるもん*1。今いろんなモンを買ったとしても、実際に銀行口座から引き落とされるのは、来年になるってこと。すてきでしょ?
しかもね、クレジットカードでお買い物なんてしないで、いきなり、現金を引き出して*2、それを銀行口座に預金しちゃっていいカードってのまである。(どのカードか知りたい人は、がんばって探しましょ。)
こんなことできると、どーんなメリットがあるかっていうと、例えば、使用限度額が5,000ドルとするでしょ。そしたら、5,000ドルを引き出して、それを利率5%(2007年の前半あたりなら、普通の利率だったよ。今だったら、4.5%くらいになっちゃうかな。)で1年間の定期預金作っちゃうの。1年後には、250ドルの利子がついて返ってくんので、元本の5,000ドルはクレジットカードの返済にあてて、250ドルはそっくりそのままいただいちゃうわけ*3。7枚くらいのカードで実証済みなので机上空論じゃない。
だけどね、「儲かるね」って話がしたいんじゃなくて、なんでこんなことができちゃうのか?ってことを考えたいわけ。
明らかに得する話には、いろいろ落とし穴がつきもんでしょ*4。
じゃ、このクレジットカードの最大の落とし穴は何かっていうと、アメリカにいる多くの人がね、5,000ドルを引き出した後、定期預金にしないで、何か買っちゃうわけ(でっかいテレビとか、豪華な旅行とかね)。それか、前に買っちゃったもんの返済にまわしちゃうわけ(こちらの比率が高いよーな気がする)。アメリカにいる人の多くが、根っからの借金好き・買い物好きなんよね。
そうすっと、クレジットカード会社は、定期預金にして250ドル荒稼ぎしているやつがいるってことは知っているんだけど、しかもその荒稼ぎの250ドルはクレジットカード会社の損になってるっちゅうことも知ってんだけど、その他大勢の借金好きの人からボロ儲けできちゃうから、全体としてはOKなわけ。(クレジットカードにおけるコバンザメ手法)
クレジットカード会社がどんくらいボロ儲けできちゃうかっていうと、5,000ドルの残高を抱えた人たちから、毎月60ドルくらいの利息を徴収するわけ。しかも、たいていの人は、5,000ドルを完済できる可能性はないに等しいから、ずーっとずっと、毎月60ドル/人が入り続けるわけさ。そしたらさ、たとえ、定期預金にして荒稼ぎする奴らがいたとしても、クレジットカード会社は痛くも痒くもなーい、ってことになる。
ビジネスの世界でも、学問の世界でも、(1次)モデルってのを想定して、いろいろ考えてるわけでしょ。クレジットカード会社からすれば、典型的なアメリカ住民のモデルってのは、使用限度額いっぱいまで浪費して、毎月利息を払う「御人好し」なわけ。そうすると、クレジットカードの仕組みってのは、その典型的な「御人好し」が損をして、クレジットカード会社が儲かるようにできてる。
(ここからが重要)、そんで、もしそのモデルから外れる行動を取ったとすると、今度は、クレジットカード会社が損をして、カード利用者が得をするチャンスが出てくるわけ。だから、さっき言ったような250ドルを稼ぐことが可能になってる。だけど、あくまでそれが少数派でなければ、維持できない仕組みなんよね。
ってなわけで、結局何が言いたいのかっていうと、(たとえ些細なことでも)「世間と違うことをする」ってのはとても重要で、多くの人がススメてる。でも、「世間ってなに?」ってのもよく聞くよね。そんな世間のひとつの例として、「モデル」ってのがあると思うよ。だから、なんでもいいから仕組みをトコトン理解して、その仕組みが想定してるモデルってのに思いをはせる。モデルが特定できたら、あとは、そのモデルから意識的にずれ出て行くだけ。いたって、シンプル。
ついでに言うと、アメリカでそんなことばっかしてたから、中山さん(id:taknakayama)に「お前は逃走者だ(http://d.hatena.ne.jp/taknakayama/20070212/p1)」ってホメてもらえたのかしれない、って気がする。
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ご利用は計画的に。また、自己責任で。(念のため)
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